COVARIANCE.S関数 – 統計

COVARIANCE.S関数 – 標本に基づく共分散を求める関数


1. 使い方と活用例

COVARIANCE.S関数は、2つのデータ系列の間の標本共分散(sample covariance)を計算する関数です。
共分散とは、2つの変数がどのように同時に変動するかを表す統計量で、値が正なら同方向、負なら逆方向の傾向を示します。

2. 基本の書式

=COVARIANCE.S(配列1, 配列2)

3. 引数の説明

  • 配列1 – 最初のデータ系列(数値の範囲または配列)
  • 配列2 – 2つ目のデータ系列。配列1と同じ個数のデータを持つ必要があります。

4. 使用シーン

  • 売上と広告費、気温と電力使用量などの関連性を分析したいとき
  • 回帰分析や分散分析の前処理としてデータの関係性を把握したいとき

5. 応用のポイント

COVARIANCE.S関数は、2つの標本データの偏差の積の平均(n−1で割る)によって共分散を計算します。
共分散が 0 に近い場合は、両者にほとんど関連がないとみなされます。
この関数は標本(サンプル)に基づく計算であり、母集団全体の共分散を求めるには COVARIANCE.P関数 を使用します。

6. 具体例とその解説

=COVARIANCE.S(A2:A6, B2:B6)

以下のようなデータがあったとします。

売上 (A列) 広告費 (B列)
100 20
120 25
130 30
150 35
170 40

この式では、売上と広告費の標本共分散が計算され、結果が 正の値であれば「広告費が増えるほど売上も増える傾向がある」と読み取れます。

7. 関連関数の紹介

  • COVARIANCE.P関数 – 母集団に基づく共分散を求める関数
  • CORREL関数 – 2系列の相関係数(-1〜1)を求める関数
  • VAR.S関数 – 標本の分散を求める関数
  • AVERAGE関数 – 平均を求める関数

8. まとめ

COVARIANCE.S関数は、2つの変数がどのように連動して変動するかを把握するための重要な統計関数です。
値の符号と大きさから、変数間の関係性の傾向や強さを読み取ることができます。
標本ベースのデータを扱う場合にはこの関数を使用し、母集団ベースの場合は COVARIANCE.P関数 を使用しましょう。

9. 対応バージョン

COVARIANCE.S関数は、Excel 2010以降のすべてのバージョンで使用可能です。
Microsoft 365、Excel for Mac、Web版Excelでも利用できます。