MUNIT関数 – 単位行列(単位マトリックス)を返す関数
1. 使い方と活用例
MUNIT関数は、指定したサイズの単位行列(対角線上がすべて1、それ以外が0の正方行列)を返す関数です。
線形代数の演算、逆行列の検証、数理モデルの初期化などに利用されます。
単位行列は、任意の正方行列と乗算した際に、その元の行列をそのまま返す性質を持ちます。
2. 基本の書式
=MUNIT(dimension)
3. 引数の説明
- dimension – 必須。生成したい単位行列の行数および列数(1以上の整数)。
4. 使用シーン
- 線形代数の学習・検証のために、I行列(単位行列)を生成したい場合。
- 逆行列と元の行列の積が単位行列になるかを確認したい場合。
- 統計モデルや最適化モデルの初期値として単位行列を利用したい場合。
5. 応用のポイント
MUNIT関数は配列関数として動作するため、結果を表示させるには、出力先として必要なセル範囲を選択してから入力する必要があります(旧バージョンでは Ctrl + Shift + Enter が必要)。
Excel 365やExcel 2019以降の動的配列対応バージョンでは、関数を入力するだけで自動的にスピル出力されます。
6. 具体例とその解説
3×3の単位行列を生成したい場合、次の式を使用します。
=MUNIT(3)
結果は以下のようになります。
1 0 0 0 1 0 0 0 1
この行列は、正方行列の乗算において「掛けても元の行列が変わらない」特性を持ちます。
7. 関連関数の紹介
- MMULT関数 – 行列の積(乗算)を計算する関数
- MINVERSE関数 – 正方行列の逆行列を返す関数
- MDETERM関数 – 行列式(determinant)を返す関数
- TRANSPOSE関数 – 行列の転置を行う関数
- LET関数 – 数式内で名前付き変数を定義する関数(行列演算でも有用)
8. まとめ
MUNIT関数は、単位行列を簡単に生成できる便利な関数です。
行列演算において重要な「中立元」としての役割を果たし、MINVERSEやMMULTと組み合わせることで線形代数的な処理が可能になります。
動的配列対応のExcelでは、より直感的に扱えるため、教育・業務問わず活用しやすい関数です。
9. 対応バージョン
Excel 2013以降のバージョンで使用可能です。
Excel 365、Excel 2019 では動的配列でのスピル表示に対応しています。