LINEST関数 – 回帰分析による直線の傾きや切片を求める関数
1. 使い方と活用例
LINEST関数は、最小二乗法による線形回帰分析を行い、与えられたデータに最も適合する直線の傾きや切片、統計情報を返します。
売上と広告費の関係や、時間と成長量の関係など、2つ以上の変数間の関係性を分析する際に非常に有用です。
2. 基本の書式
=LINEST(known_y's, [known_x's], [const], [stats])
3. 引数の説明
- known_y’s – 必須。既知の y 値のセット。
- known_x’s – 省略可能。既知の x 値のセット。省略すると {1, 2, 3, …} が使用される。
- const – 省略可能。切片を 0 にするかどうかを指定。TRUE(省略時)で切片を計算、FALSE で切片を 0 に固定。
- stats – 省略可能。追加の回帰統計情報を返すかどうか。TRUE で統計情報も返し、FALSE(または省略)で傾きと切片のみ返す。
4. 使用シーン
- 売上データから広告費との相関を分析して、売上予測に活用する場合。
- 生産量と作業時間のデータから作業効率を数値化したい場合。
- 実験結果から数式モデルを構築したい場合。
5. 応用のポイント
LINEST関数は配列数式として扱われるため、結果を複数セルに出力するには、範囲選択後にCtrl + Shift + Enterで入力する必要があります(旧バージョンのExcelの場合)。
新しいExcel(動的配列対応)では、通常のEnterだけでスピル機能により展開されます。
統計情報(stats = TRUE)を返すことで、決定係数(R²)や標準誤差なども確認できます。
6. 具体例とその解説
以下のデータがあるとします(売上と広告費):
Y(売上): 100, 200, 300, 400
X(広告費): 1, 2, 3, 4
次の式を使用します。
=LINEST(A2:A5, B2:B5, TRUE, TRUE)
この式は、Y = mX + b の形式で最も適合する直線の「傾き(m)」と「切片(b)」、および回帰分析に関する統計情報を返します。
結果として、傾きが 100、切片が 0 に近ければ、「広告費 1 単位増加で売上が 100 増加する」という解釈になります。
7. 関連関数の紹介
- FORECAST関数 – 回帰分析を用いて将来の値を予測する関数
- SLOPE関数 – 線形回帰の傾きを求める関数
- INTERCEPT関数 – 線形回帰の切片を求める関数
- RSQ関数 – 決定係数(R²)を返す関数
- LOGEST関数 – 指数的な回帰分析を行う関数
8. まとめ
LINEST関数は、複数の変数間の関係を統計的に分析できる強力な関数です。
特に、回帰直線の傾きや切片を求めたいとき、あるいはより詳細な統計的裏付けを持ちたいときに非常に役立ちます。
複雑な分析にも対応できるため、応用範囲は非常に広いです。
9. 対応バージョン
Excel 2007以降で使用可能です。
Excel 365 や Excel 2019 以降では、動的配列に対応しており、配列数式の入力がより簡単になっています。